抄録
【目的】糖尿病患者の慢性腎不全,特に透析療法は足病変の発症と関係している.今回,透析導入以前の糖尿病性腎症患者の足病変について検討した.【方法】106例(男性80例,年齢62.0歳(33~80歳),糖尿病病悩期間17.7±8.8年,HbA1c(NGSP)7.7±1.5%,血清Cr値1.9±0.9 mg/dl,eGFR 33.0±14.5 ml/min/1.73m2)を対象とし,その後の足病変発症状況を把握し,その危険因子についてCox比例ハザードモデルを用いて検討した.【結果】平均観察期間は32.4カ月(8~91カ月)で,10例が足病変を発症した.多変量解析ハザード比(95%信頼区間)は,喫煙歴の有無が13.0(1.16~435.8),拡張期血圧が1.18(1.03~1.37),血清Cr値が9.03(1.05~123.6)と有意な危険因子であった.【結語】糖尿病性腎症患者の足病変発症予防には,禁煙指導や高血圧・腎機能障害への積極的治療介入など,多角的アプローチが重要だと考えられた.