抄録
要旨:透析患者は易感染性があり,感染症死亡率は一般住民の7.5 倍と高く,特に敗血症が多い.敗血症の中には慢性下肢創傷感染が原因のこともある.下肢慢性創傷管理で感染制御は非常に重要である.創部や血液の細菌培養を確実に行い,各施設において原因菌,薬剤感受性に関するローカルファクターを把握する.原因菌の特定以前は,その種類を想定し,組織移行性を考慮しつつ,早急にempiric に抗菌スペクトルの広い薬剤を選択する.透析患者でも初期は十分量を投与しなくてはいけない.透析患者の下肢慢性創傷からの感染の場合,グラム陽性菌感染が多く,Methicilin-resistance Staphylococcus aureus(MRSA)や表皮ブドウ球菌などコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の頻度が高い.緑膿菌などグラム陰性桿菌の関与も一般健常人に比較して多い.栄養状態には常に留意しておかなければならない.