2016 年 8 巻 3 号 p. 137-146
糖尿病患者において,糖尿病性足潰瘍は下肢切断によくある前兆である.従来の治療法では長期間の非荷重,頻回な潰瘍デブリードメント,先進的創傷ドレッシング,入院の繰り返しなどが必要なことが多かった.潰瘍に感染,末梢血管疾患,骨髄炎,壊疽,敗血症などが併発すると,生命を脅かすものとなる.従来の治療で潰瘍の予防や治癒が不可能だった場合,予防的糖尿病足外科手術は重要な治療選択肢となりうる.潰瘍の状態が落ち着き,患者に著明な動脈疾患がみられないときが,予防的糖尿病足外科手術のよいタイミングである.手術を成功させる鍵は,足部病理学の十分な検査による慎重な患者選択と,患者の合併症管理である.病足部に対するタイムリーで積極的な外科的介入によって,不成功に終わる従来の治療に対して,長期間を費やすことを防ぐことができる.本稿では,予防的糖尿病足外科手術の適応および,潰瘍形成につながる病理生体力学的な足の問題の相関性について論じたい.