2016 年 8 巻 3 号 p. 182-187
糖尿病足病変発生患者においては種々の理由により足関節の背屈制限がみられる症例があることが分かっている.これに神経障害が合併すると,適切な足底装具や整形靴を作製し免荷したとしても,前足部に潰瘍の再発を繰り返してしまう.われわれは経皮的アキレス腱延長術を行い,足関節の背屈制限を改善させることで前足部潰瘍再発をコントロールしえた症例を経験したため報告する.再発を繰り返す潰瘍に対して漫然と保存的治療を継続することは,最終的に潰瘍の悪化や感染へとつながり,結果として長期の入院治療や高位切断にいたる大きなリスクになる.糖尿病患者が長い経過のなかでできるだけ潰瘍から解放された活動的な生活を送るためにはさらなる積極的な予防的治療も考慮するべきである.経皮的アキレス腱延長術は足関節の可動域制限を改善し,前足部の潰瘍の発生・再発を予防する優れた外科的免荷の代表的な術式であるが合併症や適応の選択には慎重であるべきである.