抄録
看護理工学という新たな学問分野が始まりつつある.健康・疾病にかかわる支援と療養生活の支援とを目的とし,患者と日々長時間直接密に接する看護に立脚した研究と技術開発を新たに行う理学・工学の研究とが越境する領域である.全人的なあり方を重視し臨床的場面に即した支援に着目する看護の視点はCure(治す医療)からCare(支える医療)へのパラダイムシフトにおいて中心的な位置づけとなってきており,実世界における問題解決を目的としている点で共通する工学との連携による看護工学の展開は,研究成果,開発した製品やサービスを社会的に広げる鍵となっていくと考えている.脚のケアのなかでも特に糖尿病足潰瘍の予防ケアを例に,歩行時足底負荷の客観的計測と可視化,人工知能による補完的自動化を用いた足底温分布からの血流パターン識別を取り上げて看護工学と下肢救済の関係を概観する.