近年,原価計算の基礎的構造を分析した研究が多く見られる.それらのなかでもNoreen(1991)は,活動基準原価計算(ABC)の構造について分析し,製品の販売価格設定や生産中止等の意思決定に用いる関連原価の計算に必要な基礎的原価データをABCが提供するための3つの条件を導出しており,その後の研究にも大きな影響を与えているものとして注目されている.本稿では,意思決定に必要な関連原価を計算するための基礎的データを原価計算システムが提供するためにNoreen(1991)が示した条件を詳細に分析する.そのために,まず各条件の導出過程を明らかにし,その貢献を示す.その上で,各条件の特性を分析し,それらの相互関係を明らかにする.さらに,各条件との関連で,ABCは,意思決定によって影響を受ける変数とコスト・ドライバーとの関係を明確に表せるということを論証する.