2008 年 16 巻 2 号 p. 69-84
我が国では近年,「行動する株主」の活動が目立つようになり,多くの企業がこれに対抗して買収防衛策を導入している.買収防衛策の導入が株式価値あるいは企業価値に与える影響に関しては,交渉力向上仮説という肯定的な見方と,経営者保身仮説という否定的な相対立する見方が存在する.我々は,2005年4月から2006年7月までに買収防衛策の導入を公表した166社を対象にイベント・スタディを行い,経営者の持つ内部情報が伝達されることを通じて発生する情報効果を測定した.その結果,1)市場は平均的には反応を示さないものの,2)市場は株主意思の事前確認がある買収防衛策をより高く評価すること,3)買収防衛策を巡って企業と市場には「建設的な対話」が成立していることを明らかにした.