管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
16 巻, 2 号
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論文
  • 松尾 貴巳, 大浦 啓輔, 新井 康平
    2008 年 16 巻 2 号 p. 3-21
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は,ABCシステムの導入によって,組織構成員の解釈のあり方にどのような経時的な変化が生じたのかという組織変革プロセスを解明することにある.具体的には,1997年にABCに基づく利益管理システムを導入した株式会社飯田を分析対象とし,その導入プロセスにおける組織成員の行為や解釈をインタビュー調査によって明らかにしている.分析には,「解凍」・「変化」・「再凍結」という伝統的な組織変革モデル(レビンモデル)を再構成した新装レビンモデル(Isabella,1990)を採用し,ABCの導入プロセスを検証した点に本論文の意義がある.理論的あるいは技術的に優れていると考えられる管理会計システムの導入は必ずしも簡単に実施されるのではない。組織構成員が導入に際し,どのように戸惑い,苦悩し,拒否反応を示し,そして各自がそれをどのように受容していったのかというプロセス自体をありのままに記述するために,質的な研究方法を採用した点に本論文のもう一つの意義がある.

  • 新井 康平
    2008 年 16 巻 2 号 p. 23-37
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    個人レベルの業績評価情報が当該個人にどのように影響するのかについては,伝統的に契約理論を用いた分析が行われてきた.しかし,横田絵理(1998)『フラット化組織の管理と心理:変化の時代のマネジメント・コントロール』では,マネジメント・コントロールシステムが提供する情報の意味は,システムを取り巻く「心理的契約」という文脈によって規定されるという可能性を指摘した.本論文は,横田(1998)が指摘した命題の経験的な検証である.具体的には,個人の評価に伴う行動が心理的契約によってどのように影響されるのかについてのサーベイ調査を実施した.結論として,いくつかの心理的契約は,個人の評価に伴う行動に,有意な影響を及ぼすことが明らかになった.

論壇
  • 尾崎 昭雄, 斎 寿明
    2008 年 16 巻 2 号 p. 39-52
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    第一三共(株)は三共(株)と第一製薬(株)が経営統合し誕生した国内大手製薬企業であるが,その経営統合にあたり統合前企業の伝統に捉われない,多様性を活かし,企業のありたい姿の実現を目指した新たなマネジメントスタイルおよびシステムを構築し運用を開始した.このマネジメントスタイルとそのシステムは以下の特徴を有している.第一に,一気通貫のマネジメント実現のために企業理念から個別業務システムまで一体的体系を構築し,経営ビジョンの達成を図っている.第二に,各執行組織の自律性を重視し,各場面でイノベーションを促進すると同時に,企業のベクトルを整合し組織力を高めることを狙っている.第三に,第一三共固有の12構成要素からなるPDCAサイクルを廻し,継続的な価値を創出している.第四に,環境変化の激しい時代に応え社会的責任を果たすために,ステークホルダーの視点での継続的な業務評価を行い,内部統制も同時に実現している.最後に,全体最適化や課題対応/リスク管理のためにスタッフを配置し機動的なマネジメントサポートの仕組みを整えている.

  • 高橋 邦丸
    2008 年 16 巻 2 号 p. 53-68
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文は,買収対価の支払手段の違いが経営者の裁量行動にどのような影響を及ぼすかについて考察を行っている.本論文では,1999年10月に施行された株式交換制度・移転制度後に株式交換およびTOB(現金取引)にてM&Aを行った298社(株式交換:買収企業123社,ターゲット企業80社,TOB:買収企業45社,ターゲット企業50社)をサンプルとして,株式交換比率決定日および買収アナウンス日前に利益増加型の利益調整を行っているかについて分析を行った.分析の結果,買収企業については株式交換を利用した企業のほうが交換比率決定日前の決算期に利益増加型の利益調整をしていることが明らかとなった.また,ターゲット企業についても一部統計的に有意でないものの買収企業と同様の結果が得られた.この結果から,株式交換比率を自社に有利なものにするために,経営者が利益増加型の利益調整を行っていることが示唆されている.

  • 蜂谷 豊彦, 山本 修
    2008 年 16 巻 2 号 p. 69-84
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    我が国では近年,「行動する株主」の活動が目立つようになり,多くの企業がこれに対抗して買収防衛策を導入している.買収防衛策の導入が株式価値あるいは企業価値に与える影響に関しては,交渉力向上仮説という肯定的な見方と,経営者保身仮説という否定的な相対立する見方が存在する.我々は,2005年4月から2006年7月までに買収防衛策の導入を公表した166社を対象にイベント・スタディを行い,経営者の持つ内部情報が伝達されることを通じて発生する情報効果を測定した.その結果,1)市場は平均的には反応を示さないものの,2)市場は株主意思の事前確認がある買収防衛策をより高く評価すること,3)買収防衛策を巡って企業と市場には「建設的な対話」が成立していることを明らかにした.

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