2010 年 18 巻 2 号 p. 53-64
本稿の目的は,CSR(corporate social responsibility)活動の経済性評価を支援する管理会計手法の可能性と課題を抽出することにある.企業がCSR活動の影響ないし効果を経済性の観点から評価したいと望むのは,組織の内外のステークホルダーから当該諸活動が企業ならびに社会の持続的成長・発展に寄与するものであるとの合意を引き出し,CSR活動の持続可能性を確保したいとの思いがあるからだ.ただし,CSR活動の内容が多岐に及ぶことにくわえて,管理会計の貢献領域も限られているといわなければならない.本稿では,CSRのもっとも重要な活動に位置づけられる環境保全活動の進展をもたらすアプローチとして多くの企業が期待を寄せるマテリアルフローコスト会計(:MFCA)に的を絞り,その意義と課題を抽出する.しかる後に,当該アプローチのさらなる革新の可能性を示唆するものとして日本ユニシス・サプライ株式会社のケースを取り上げ,検討をくわえる.