本稿は,環境,社会およびガバナンスに対して管理会計はどう向き合うかを考えるうえで,筆者が適切と考える「ガバナンス・コントロール」の可能性を提示することを目的としている.コントロール論は,企業競争力の維持を前提に,同時に投資家・株主の意向に沿った形で資本市場での企業の価値創造,さらには経営の持続性を絶えず追求していかねばならない.これらは互いに矛盾する要素を抱えており,柔軟に対処していかなければならない.けだし,これらの要素が長期・短期の時間的なパラドックス,財務・非財務のパラドックス,企業内外のパラドックスといったものを抱え込んでいるからである.本稿は,従来のマネジメントのコントロールの枠を超え,ガバナンスのレベルでのコントロールに焦点をあてることで,内だけでなく外をも向いた,つまり,社会性を意識したコントロールの展開を強調している.要するに,本稿は統一論題での議論を通して,「ガバナンス・コントロール」の可能性を明らかにすることで,新しいコントロール論の構築を目指している.