2015 年 23 巻 2 号 p. 17-32
長崎県に造船事業部を有する国内造船の準大手であるA社造船所(以下A社と称す)が,新造船事業の採算性改善と競争優位の創出を目指して,2010年6月以降に取り組みを本格化させた戦略的原価管理としての原価企画(Target Costing)を対象に論究を展開する.
具体的には,A社の原価企画への取り組みが,同社が当初期待していたレベルで採算性改善および競争優位の創出につながっていない中で,これらの解決のための方策に関して論究を行うものである.A社の当初予定レベルでの効果が創出されていない要因を外部環境と組織内部リソースの両側面から解明する.その際に,造船業において比較優位を持つと言われる韓国造船企業との比較を行うことで,A社の課題をより明確にする.今回,本研究の成果ですでに公表済みの内容に加えて,新たにA社を完全子会社化したZ造船所(以下Z社と称す)およびA社よりも早い時期に原価企画に取り組んだ造船企業であるF社造船所(以下F社と称す)でのインタビュー調査の結果をふまえて論究の進展を図っている.