2015 年 23 巻 2 号 p. 45-59
企業の社会的側面(社会性・人間性)が強調されるようになっているが,経済性と社会性・人間性とが長期的には一致しなければ,持続可能な企業価値の創造は望めない.持続可能な企業価値創造には,多様なステークホルダーの認識とともに,コーポレート・ガバナンスが重要である.コーポレート・ガバナンスの問題は,会社観が深くかかわり,それには国による違いもある.統合報告には「投資家との対話による長期的な企業価値の創造」と「価値創造に影響する多様なステークホルダーの認識(多元的な企業価値の追求)による長期的な企業価値の創造」という大きく2つの役割があり,両者はつながっている.さらに,会社観が異なると統合報告の役割の内容や大きさが異なることが指摘できる.