本稿では,まず,行政を3つの分類,即ち,①収益と費用を認識できる外環部,②収益は認識しにくいが費用は認識できる内環部,③収益も費用も認識しにくい中心部に分ける.前2者は政策の執行管理過程を,後者は政策の企画立案過程を意味する.
次に,管理会計手法には,収益や費用,利益といった中で形成されてきた伝統的な管理会計手法があるとともに,収益や費用に相当するものに拡張した広義の管理会計手法がある.そして,上記の行政の3分類に対しては,手法ごとに適した射程がある.
更に,管理会計の行政への拡張に当たっては,関係者により,即ち,行政実務家やCPA,財務会計研究者,管理会計研究者,コンサルタント,議員,マスコミにより見方が異なる.
このような中,管理会計研究者には,行政の外環部や内環部に存在する行政実務家や,各分野の研究者との交流が今後期待される.その上で,管理会計の行政への拡張に向けた今後の推進力として,議員やマスコミの理解を得ていくことが期待される.