2018 年 26 巻 1 号 p. 61-81
本稿は,組織コントロールのためにインプット目標を定める是非とインプット目標の決定権をエイジェントに委譲する是非をエイジェントの心理的な個人属性および計画コストの観点から契約理論に依拠して論じた.すなわち,会計学で展開されてきたコントロール理論に,心理学的な要素を加味して議論の拡張を試みた.
分析の結果,(1)インプット目標の設定が組織コントロールに対して有用であること,(2)プリンシパルの計画コスト係数を閾値として,インプット目標の決定権の委譲の是非が区別されること,(3)インプット目標に近い努力を投じようとする意欲が低いか,プリンシパルが提示する意見に近い目標をエイジェントが申告しようとする傾向が高いほどボトムアップの目標申告が最善になる範囲が拡大することを示した.この結論は,目標をトップダウンで提示する組織とボトムアップで申告させる組織が併存することの一つの説明となる.またこの結論は,参加的決定に関する会計学の伝統的議論の結論と整合的であるが,結論の根拠が異なる.この意味で,本稿は,組織の分権化の議論に新たな視点を提供した.