2021 年 29 巻 2 号 p. 35-48
実務における意思決定の判断材料を学術研究の知見に求める考え方は,エビデンス・ベースト・マネジメント(EBMgt)と呼ばれ,近年実務家のあいだでも関心が寄せられている.そこで本稿では,管理会計研究が提供するエビデンスの内容について,EBMgt実践上の有用性という視角から論考を試みる.具体的には,エビデンスの内容に妥当範囲および経済的帰結という2つの観点が求められることを提示し,その背景や課題を議論する.また,これら2つの観点に基づいて,近年の下方硬直的なコスト・ビヘイビアに関する研究群を題材としてとりあげ,その知見をEBMgtに活用する場合の実際の課題を検証する.