2023 年 31 巻 1 号 p. 165-181
本研究は,Gao et al. (2019)によって構築されたハイブリッド型の企業価値評価モデルが,日本企業の評価にも有用であるかどうかを,経営者による予想利益をもとに検証する.そこでは,導出された企業価値が現実の株価にどの程度近似しているかを,両者の差異であるバイアス,バイアスの絶対値で測定した絶対評価誤差および株価に対する単回帰分析の決定係数の三者から評価する.それだけでなく,本研究では,観察される株価から資本コストを逆算した上で,このインプライド資本コストが各種のリスク指標とどの程度相関するのかについても調査する.本研究の分析結果は,経営者による予想利益をハイブリッド型モデルのインプットとすることで,特にリスク評価の点で企業価値評価の質を改善し得ることを明らかにしている.