2024 年 32 巻 1 号 p. 141-159
本研究では,複数のマネジメント・コントロール(MC)実践が対立的要素を両立させるメカニズムの解明に取り組んでいる.その特徴は,(1)具体的・非集約的なMC実践の捕捉,(2)テンションの鳥瞰的な捕捉,(3)対立的要素の一方から両方の追求に切り替える局面におけるMC実践の展開過程の追跡である.縦断的事例研究の結果,包摂,抑制,分割といった特性を持つMC実践が,組織の異なるレベルで顕在化する三つのテンションのバランスを通じ,対立的要素の両立に資することを発見した.本研究は,テンション・マネジメントにおいて,どのような特性のMC実践がなぜ求められるかを説明することで,先行研究に貢献する.