本稿は,コーポレートガバナンスがインタンジブルズの情報開示と財務パフォーマンス(会計パフォーマンスおよび市場パフォーマンス)に与える影響を確認することを目的としている.このため,これらの要素の関係を構造モデルにより検証したBraune et al.(2020)の理論的枠組みを用いて,日本における主要な上場企業278社を対象とした分析を行った.分析の結果は,これらの企業の財務パフォーマンスがその財務構造に高く依存している一方で,コーポレートガバナンスはインタンジブルズの情報開示にほとんど影響を与えておらず,また,財務パフォーマンスに対する影響も弱いことを示している.
本研究の貢献は,日本における主要な上場企業においては,株主価値を高めるという観点からのコーポレートガバナンスが有効に機能しておらず,その結果,これらの企業の財務パフォーマンスの低収益性が,インタンジブルズへの投資とその情報開示の不足に起因する可能性があること,を実証分析により示した点にある.
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