2025 年 33 巻 1 号 p. 81-96
本稿では,ケース・スタディの手法により,中小企業の経営者による管理会計導入の意思決定に対する影響要因の考察を行う.先行研究では,企業の属性や経営者の受けた教育,会計専門職の影響などの要因が検討されてきた.これに対し本稿では,中小企業の大半が同族企業であることに着目する.より具体的には,経営者一族の親族間関係の中で共有されている価値観や哲学を資源の束として捉える「ファミリネス」という概念を援用し,それが経営者が管理会計導入を意思決定する際の大きな影響要因になっていることを論じる.本稿で考察する同族中小企業の事例では,経営者が先代社長であった父親から受け継いだファミリネスが,他社への出向経験や会計システムとの出会いを経て,原価管理の導入に結び付いた.