管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
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論文
総合原価計算における非度外視法の研究―仕損じおよび減損が一定点で発生する場合―
村田 真理
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1996 年 4 巻 2 号 p. 3-27

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抄録

総合原価計算において,工程で仕損じおよび減損が生ずる場合に従来から用いられる方法としては,度外視法と非度外視法があり,非度外視法は原価管理目的のため,ならびに正確な製品原価の測定のために有用であるとされている.しかしながら,その測定構造にはいくつかの問題点が存在する.まず,通常は工程の広い範囲に分布して存在すると考えられる期末仕掛品の状態を単一の進捗度の値によってあらわし,その値にもとづいて仕損じ費および減損費の追加配賦の方法を決定しているため,本来はそれらの発生点を通過していない期末仕掛品が仕損じ費および減損費を負担したり,発生点を通過しているのに仕損じ費および減損費を負担していない期末仕掛品が存在する場合が生じる.また,工程における仕損じと減損の発生点をあらわすために用いられている進捗度の概念と,それらの完成品換算数量を求める際に用いられる本来の意味での進捗度の概念とが混同されているばかりではなく,原価計算上の仕損じと減損の区別が明確でなく,互いにどのようにかかわりあっているかについても明示されていないので,伝統的な方法によって求められる完成品原価は,必ずしも正確であるとはいえない.

そこで本研究は,正常な仕損じと減損とがそれぞれ工程の一定点で発生する場合において,総合原価計算の先入先出法による非度外視法について,伝統的方法の特性とその問題点を究明するとともに,それらを改善する新しい製品原価の測定方法を提案する.この方法では,仕損じと減損について,概念上の区別だけではなく計算上の区別も明確にし,仕損じと減損の関連の仕方を反映させ,また仕損じと減損の発生点をあらわす進捗度が完成品換算数量を算出するための進捗度と必ずしも同一ではないことを指摘し,両者を明確に区別して取り扱う.さらに,この方法は個々の仕掛品の進捗状況をとらえ,仕損発生点を通過した仕掛品の数量と,減損発生点を通過した仕掛品の数量を把握し,実際にそれらの発生と因果関係のあるものだけに仕損じ費および減損費を正しく追加配賦することを可能にする.

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© 1996 日本管理会計学会
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