皮膚の科学
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症例
イミキモドによる陰茎の尋常性疣贅治療中に顕在化した有棘細胞癌の 1 例
谷口 君香矢嶋 萌東 新谷崎 英昭矢村 明久
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2021 年 20 巻 3 号 p. 216-224

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抄録

33歳,男性。幼少期から仮性包茎であったが,亀頭包皮炎を起こし排尿困難となったことから10年以上前に環状切除術を受けた。その後の詳細は明らかではないが,陰茎に乳頭状の結節を認め,拡大してきたため当院を受診した。亀頭表面全体と包皮に角化を伴う小結節を認め,包皮は硬く,冠状溝は癒着していた。病理所見から尋常性疣贅と診断した。本症例では病変の範囲が広く,奥まった部分にもあることや施術の疼痛が強いことから液体窒素療法は困難であると考え,イミキモドの外用を試みた。イミキモドは週 3 回使用し,発赤,びらん,腫脹,疼痛が生じた時は外用を一旦中止し,症状が消失するまでベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩軟膏や白色ワセリンを外用した。 7 ヶ月の外用で,一部残存したが改善し,包皮の翻転も可能になった。しかしその後一部分に有棘細胞癌を認めた。イミキモド外用治療と有棘細胞癌出現との因果関係は不明である。日光角化症に対しイミキモドを外用し,有棘細胞癌を認めた報告はあるが,尋常性疣贅に使用し,有棘細胞癌を認めた報告はない。本症例は尋常性疣贅と考えた局面の一部に有棘細胞癌が潜んでいた可能性が高いと考えた。尋常性疣贅は難治なことも多く,イミキモド外用も有効な治療法だと考えるが,外用中は注意深く観察し,悪性腫瘍の発症を疑えば早期に皮膚生検を行うことが重要と考えた。 (皮膚の科学,20 : 216-224, 2021)

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© 2021 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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