管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
論文
在庫問題を考慮した多重単位期間最適製品ミックス決定による短期予算設定
後藤 晃範
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 7 巻 1-2 号 p. 115-135

詳細
抄録

年次予算は,企業の生産計画,販売計画,財務計画,人事計画,研究開発計画などの種々の経営計画を統合する期間総合計画であり,現実には,常に変動するであろう諸材料の仕入価格,製品の販売価格,需要数量などの予測に基づいて月別または,四半期別に編成される.

したがって,年次予算の編成のために与えられた条件の下で最適な製品ミックス決定を考慮しようとする場合には,1事業年度を構成する月,二ヶ月,あるいは,四半期などを単位期間として設定し,複数の単位期間,すなわち,多重単位期間について製品ミックスの同時決定をおこなう必要がある.しかし,従来からの製品ミックスに関する研究は,単一期間のみ対象とするものがほとんどであり,したがって,年次予算の編成に必ずしも現実的であるとはいえない.

そこで本研究では,1予算期間を対象として,使用する財貨および用役の購入価格,生産可能数量,製品の販売価格,販売可能数量等が変化する状況の下で,単位期間末における在庫水準を考慮し,財政状態をも直接的に扱うことが可能である,多重単位期間の最適製品ミックスの同時決定モデルをシナリオ方式に基づいて構築し,かつ,それを包括する企業予算モデルを構築することを目的としている.

本研究における,複数の単位期間にわたる製品ミックス決定モデルは,製品在庫の払出方法を,先入先出法としている.これにより,ある単位期間における販売数量の中に,複数の生産時期の異なるロットが混在することになり,そのため,各期の販売数量および生産数量が決定されないと,その期の販売数量の中に,生産時期の異なるロットがどのように含まれるかを把握することができない.そこで,本モデルでは,事前に,異なるロットの混在する全てのパターンを考慮し,これをシナリオとし,シナリオごとに線形計画法を用いて定式化をおこなう.この各シナリオでの最適値の内,もっとも大きいものを本モデル全体の最適値とする.これにより,各単位期間の生産数量および販売数量を決定し,製品ミックスが財政状態に与える影響を把握するために,各単位期間ごとの見積損益計算書および見積貸借対照表を表示している.

著者関連情報
© 1999 日本管理会計学会
前の記事 次の記事
feedback
Top