わが国の産業界ではM&Aや業務提携といった企業間のアライアンスが盛んである.その目的には差別化や低コスト化などがあるが,実際にはコスト低減が主要な目的となるケースが多い.
そこで本稿では,経済企画庁「企業行動アンケート調査」のデータから日本の製造業を対象に対数線型モデルを用いて,市場環境の段階(成長・成熟・衰退)に応じて,アライアンス戦略(M&A・業務提携)とコスト低減戦略(低減対象:上流・中流・下流コスト)を組み合せる場合に,どのような組み合わせが財務状況に好ましい作用を与えるかを検証した.その結果,「主要事業が成熟市場に属する企業が,中流コストを低減対象とする場合においては,業務提携よりもM&Aを選択する方が短期的に効果を得るには好ましくなるが,同じ条件で長期的な効果を得るには業務提携を選択することが効果的となる.」ことなどが検証された.