人体科学
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評論
「胎内記憶」とそれに関連する言説をめぐって
~感情的な反発から理性的で建設的な提案へ~
大門 正幸
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2020 年 29 巻 1 号 p. 22-31

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抄録

「胎内記憶」という表現は本来「母親の胎内にいる時の記憶」を指す語であるが、「過去生記憶」や「中間生」と呼ばれる受胎前の記憶、「誕生時記憶」なども含めた総称として用いられるようになってきている。胎内記憶研究の第一人者とされる池川明氏の活躍によって一般に知られるようになったこの概念は、広く受け入れられるようになると同時に、様々な批判を受けるようにもなってきた。本稿では、「専門家」による「胎内記憶」批判を検討し、それらが妥当性に欠けるものであることを示す。一方、「胎内記憶」推進派の言説や実践についても改善が望まれる点がある。特に次の二点は重要である。第一に、人生観に関する知見という「胎内記憶」研究から得られる「態度価値」を重要視するあまり、たとえば「子どもはみな親を選ぶ」のような過度な一般化がなされ、実際のデータから乖離してしまうことがある点である。「胎内記憶」を「根拠」とするのであれば、データについてはより慎重な取り扱いが必要であろう。第二の点は、「胎内記憶」と密接に関わる特殊能力の取り扱いについてである。具体的には、胎児との対話や、重い障がいを持った子どもとの対話など、「胎内記憶」同様、従来の脳還元主義的意識論では説明できないコミュニケーションである。これらについては、「胎内記憶」の真実性と同様に、調査・研究によってその実在性が確認されるべきであろう。

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