2019 年 19 巻 p. 1-7
スマート・ディバイスを基点とするマーケティング・リサーチは,マーケティング活動の可能性を広げると同時に消費者のプライバシー侵害や犯罪被害のリスクも高めている。本研究では,そうした新しいリサーチ活動に対する消費者の同意に着目しその同意の特性を明らかにするとともに,同意内容の遵守が企業のリサーチ活動の倫理的行動規準として十分な役割を果たしうるかどうかを検討することを目的としている。考察の結果,リサーチに関する同意の付随性が不本意さという特性を同意に付与している点,また同意形式上の付随性の比率が高い場合や収集した消費者情報の2次利用が多い場合にそうした同意の不本意さが高まる点が示された。こうした点から,同意内容の遵守という点のみで企業のリサーチ活動を診断することは,消費者のネガティブな反応を抑止するという意味では不十分であるという点が確認された。