日本経営診断学会論集
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新型コロナウイルス禍により見えてきた村米制度の農家と酒蔵の課題
松原 茂仁
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2022 年 22 巻 p. 96-101

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抄録

本研究は,山田錦特A地区に約130年間続く村米制度に着目し,新型コロナウイルスによる非常時における農村と酒蔵との長期的な連携の意義と課題を明らかにすることを目的とする。研究方法は,2020年春季から2022年春季までの,約2年にわたる継続的な農家側と酒蔵側へのインタビュー調査を基に分析した。その結果,村米制度の意義として,昔から続くインフォーマルな情報交換ルートと非常時の減産率の低減の2つが確認された。そして,村米制度は環境変化に適応しながら継承されてはいるが,当初の長期安定的な支え合う関係性が揺らぎつつあることがわかった。農家も酒蔵も村米制度の必要性と意義は実感していることから,現在の取引の仕組みの矛盾を理解したうえで,関係性を再構築することが課題と考えた。また,村米制度で培った集落の強い紐帯や,需要者との助け合いの精神などを活かした新連携を提案した。

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