2024 年 24 巻 p. 84-90
近年,日本の生産年齢人口の減少が問題視されており,企業存続のためにも人材の重要性が増している。特に中小企業において人材不足は深刻な経営課題であり,この問題の解決策としてリテンション・マネジメントが注目されている。中小企業でアプローチすべき離職要因として,本研究では企業にとっても従業員にとっても不本意な要因である「健康」による離職に着目した。そこで本稿では,健康理由による離職者を定着させる戦略として「健康経営」が有効であるという仮説を立て,大企業と中小企業の健康経営の捉え方の違いに焦点を当てながら,それぞれの離職経験者と未経験者にアンケート調査を実施した。その結果から,健康経営が人材定着に有効であることを示し,さらに具体的に人材定着に効果的な健康経営の取り組みについて考察することで,健康経営の適切な取り組み方について提案した。