資本主義は,現代的な企業経営手法と相まって,効率と生産性の向上に寄与したことは疑うべくもない。資本主義とは,単に利潤を得るシステムを表現する言葉であったはずが,問題は,いつの間にか最高の目的へと転化してしまったことではないだろうか。本論文は,地球上の多くの人が急き立てられるように,競争相手を打倒し,物欲を刺激し,生産して,消費するという人間観をベースとする経済学の教義とは異なる立ち位置をとる。仏教思想を援用し,経済価値を第一とする資本主義を問い直し地球と人間が持続可能性を加味した開発のあり方を検討した。仏教思想の中核「四法印」などから,無執着,知足,感謝,慈悲の4つエッセンスを抽出,経済成長は必ずしも人間らしい,健全な生き方につながらないことを明確にした。そして,経済価値一辺倒ではなく,多元的な価値が尊重される社会のあり方を考究した。