音楽表現学
Online ISSN : 2435-1067
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ムーソルグスキイの中期歌曲集《子供部屋》にみられるロシア語イントネーション模倣の特徴
初期、後期の歌曲との比較から
竹下 可奈子
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2012 年 10 巻 p. 15-32

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抄録

本研究は、ムーソルグスキイの中期歌曲集《子供部屋》にみられるロシア語イントネーション模倣の特徴を、 彼の初期、後期の歌曲との比較を通して明らかにしようとするものである。歌曲集《子供部屋》は、これまでロシア語模倣の極致などと評されながらも、その旋律線がどのようにロシア語イントネーション(音高)を模倣し作曲されているのかについては、詳細な検証が行われてこなかった。そこで本研究では、分析の観点を歌詞における「ストレス音節の扱い」と「文末の処理」に定め、それに基づいてムーソルグスキイの初期 ・ 中期 ・ 後期における歌曲の旋律線を概観することによって、《子供部屋》にみられるロシア語イントネーション模倣の特徴を明らかにすることとした。その結果、中期に作曲された《子供部屋》 に収録されている歌曲は、初期・後期の歌曲と比べて、歌詞のストレス音節の音高を変化させることによってロシア語イントネーションを模倣するという特徴が明らかとなった。また、フレーズ末の音高を基本的に下降して終了させるという特徴もみられ、これらの点がロシア語イントネーションを模倣した《子供部屋》特有の特徴として見いだされた。

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© 2012 日本音楽表現学会
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