音楽表現学
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オルガンからピアノへ
師範学校におけるオルガン・ピアノ指導の変遷
鈴木 慎一朗
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2004 年 2 巻 p. 35-50

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抄録

 本稿は,1931(昭和6)年から1945(昭和20)年までの師範学校におけるオルガン・ビアノ指導の実態について明らかにすることを目的とする。師範学校の器楽指導においては,明治期にはまずオルガンが導入され,ピアノが主要楽器として明確に位置付けられるのは1931(昭和6 )年の「師範学校教授要目」である。師範学校ではオルガン教科書やオルガンとピアノの併用の視点で編纂された教科書が出版,使用された。その後,1943(昭和18)年には文部省国定教科書としてのピアノ教則本『師範器楽 本科用巻一』が出版される。研究の方法として,文献調査および当時の師範学校音楽科教員や卒業生を対象とした聞き取り調査とアンケート調査の2つのアプローチを採る。判明した点は以下の通りである。

1) 1931(昭和6)年以降においても新たにオルガン教科書が出版される状況があり,一方,オルガンとピアノの併用の視点で編纂された教科書も出版された。1943(昭和18)年にはピアノ用の文部省国定教科書『師範器楽本科用巻一』が出版された。

2) 1931(昭和6)年以降においてもオルガン指導は継続し,アップライトピアノやグランドピアノによる指導も徐々に広がっていった。アップライトピアノについては,授業の他,生徒の自主的な練習に供されることもあった。

3)生徒の間では,オルガンよりピアノの方が上級向き・高級というピアノ志向の傾向が見られ,また上級生が優先的にピアノを使用するというルールが見られた。

4)器楽指導の方法としては,師範学校の音楽科教員が生徒の進度を確認しながら進める「検閲方式」が採られていた。

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© 2004 日本音楽表現学会
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