音楽表現学
Online ISSN : 2435-1067
Print ISSN : 1348-9038
音楽身体表現集団 The Pacific Eels の挑戦
「グラマーなボディ」に代わる芸術活動への道
小西 潤子
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2004 年 2 巻 p. 23-34

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抄録

 近年では,音楽のあらゆる場面で「グラマー化」が行われている。すなわち,ある音楽を豊かで完全なサウンドを備えているものに見せかけ,あるいは加工しているのである。グラマー志向は,人々を「本物」の音楽や「本物」の音楽的行為から分断している。この現状を打破するために,グラマーを超える価値観のもとで,「本物」の音楽との関わりを考え直す必要がある。静岡大学生による音楽身体表現集団The Pacific Eelsは,グラマーではないやり方で参加型イベントの企画運営を行い,自らが芸術の担い手,エイジェント,享受者という枠にとらわれず,地域の人々とともに音楽表現することの意義を見出した。本論では,その集団設立経緯とコンセプト,組織づくりと準備,「こどもわくわくワークショップまつり」での企画と本番に至るプロセスを紹介したうえで,クリストファー・スモールが提唱する音楽行動の概念に則り,「本物」の音楽的行為を追及すべき新しい芸術活動の可能性について論ずる。

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© 2004 日本音楽表現学会
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