本論の目的は、認知的ならびに音楽理論的知見を背景に、いわゆる西洋クラシック音楽やその延長線上にある音楽を対象とし、その音楽の表現を楽譜から読み取る作業に直接寄与する 2つの視点を提起することにある。リズムと拍子の差異を明らかにし、差異を越えてその関係を包括的に捉える「1. 楽譜からリズム表現を構築するための視点」、原初的な群化を基点とし、時間構造の階層性を背景に行われる音のグルーピングについて述べ、旋律の発展を音のグループ同士の関係性として捉える「2. 旋律素材同士の関係性を発見するための視点」、「1.」「2.」で提起された2つの視点が、ショパン作曲《バラード第1番 作品23》の冒頭部分から第2主題開始部分までの分析を通して例示される「3. 音楽表現分析の実例による例証」の3部分より成る。