1997 年 21 巻 1 号 p. 47-65
実践的な教授技術の習得・改善のための専用教室の開発と利用を通して蓄積した知見並びに理念について述べる.本専用教室の開発にあたっては,1974年から4年間にわたり「RA教室」と呼ばれる特別教室で実施されたマイクロティーチング並びにその事前指導を通して蓄積されたノウハウが活用された.すなわち,教卓,机,椅子, ビデオ装置やレスポンスアナライザーのみならず教室の居住環境に至るまで,個々の機能並びに構造については,受講生の心理的側面をも考慮して,独自に設計し仕様を定めた.例えば,教師役と子供役の受講生間に適度な緊張感を維持させるために,受講生の入室時に調光装置と暗幕装置によって教室内全体の照度を意図的に下げるほか,教師役の受講生が立つ周辺を周囲より明る<保つなどのエ夫を凝らした.また,学習者役の受講生による教授技術の評価を即時に教師役の受講生にフィードバックさせるために,独自の機能を持ったレスポンスアナライザーを開発し設置した.本システムの設計及び仕様策定は筆者が行い,設備備品の製作・設置は業者に委託した.ここでは,本専用教室の開発理念を機能と構造の両面から述べるとともに,開発理念が実現に 至った経緯並びに実用化への方策について考察する.本専用教室は,教授技術習得.訓練システムとして,独自に開発した教育プログラムを遂行するために,不可欠な存在になっている.また,その後,他大学でも類似の構造の教室を設置する事例 1)がみられる.