抄録
学習者がタッチタイピングをリテラシーとして習得することを目的とした打鍵技術教育においては,打鍵時間やミス率などの客観的データ(客観評価)に加えて,学習者の主観的データ(自己評価)も重要な習熟指標である.そこで,大学生を対象としたタッチタイピング教育において,打鍵時間とミス率に加えて自己評価(慣れの意識と満足感)を測定した.データ解析の結果,(1)学習者の累計平均自己評価得点と記録回数の関係は対数線形モデルによく適合し,学習者集団の平均自己評価得点の予測可能性が示唆された.(2)自己評価得点の推移パターンを抽出する方法を提示し,学習者の自己評価得点の時系列データから14種類の推移パターンを抽出した.(3)自己評価得点・打鍵時間・ミス率に対してパス解析を適用した結果,タッチタイピング練習の進行にともなって,学習者の練習意識が打鍵時間重視からミス率重視に変容する傾向があることが示唆された.