2022 年 1 巻 2 号 p. 236-249
本稿は,マーケティングにおいてAlderson(1965)から問題視されている個人の行為からどのように集団的現象が生じ,個人がどのように規制を受けるのかというミクロ・マクロリンクの問題をマーケティングの最新視点であるS-Dロジックのサービス・エコシステム(SES)を用いて対処する。第1に,SESの出現した経緯を学説史的にまとめる。SESはマルチレベル的な集約構造になっており,理論的な発展として見るとミクロからメソ,マクロレベルに向けた拡張としてとらえることができる。第2に,集約レベル間はいかにしてリンクしたのかを解明するため,哲学の「創発」と「共有意図性」,経済社会学の「埋め込み」の3つの用語に着目し,概念間の関係を検討することを通じて「SESの創発プロセス」の枠組みを提案した。