マーケティング史研究
Online ISSN : 2436-8342
1 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特集論文
  • ―批判的合理主義の観点から―
    堀越 比呂志
    2022 年 1 巻 2 号 p. 189-203
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿は,社会科学としての研究方法,歴史科学としての研究方法,研究と実践という節建てになっている。その展開の中で,マーケティング史研究の方法が考察され,次の4つの主張が示された。①科学的知識の特徴づけに関して,批判的合理主義の立場が今のところ最も説得力がある。それゆえ,帰納という幻想を捨て,マーケティング研究が科学であるならば,経験的研究も,実証主義から反証主義へと移行し,より理論構築へエネルギーを注ぐべきである。②人間の行為現象を対象とする社会科学においては,合理性原理を中心に理論的構築を行わざるをえない。そのためには,状況の論理,ゼロ方法,制度主義というPopperによって提案された理論構築の方法の採用が妥当である。③こうして生みだされた理論を用いて,個別的事実の様々な側面を描くことに関心を持つのが歴史研究であり,歴史研究には6つのタイプが考えられる。④その6つのタイプの研究は,理論的研究と実践を結びつける役割を果たしている。

  • 東 伸一
    2022 年 1 巻 2 号 p. 204-225
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿は比較的新しい因果推論の方法であるQCAに着目し,その方法論的基礎をなす集合論とブール論理との関係を踏まえその世界観と登場背景を概観し,社会科学の研究における主流派としての統計的因果推論の方法との対比の上でQCAの前提とその因果推論の考え方についての整理を試みる。さらに,small-to-medium Nのコンテクストにおける事例指向の探索的方法として登場したQCAが経営学を含む社会科学諸領域に普及する中で多用途化し,そのバリエーションが生まれることでもたらされた可能性と潜在的な課題点について検討をおこなう。本稿後半では,経営学とその周辺領域における研究課題とQCAの親和性についての考察をおこない,実際にQCAを適用した研究を進める際の基本的な手続きと研究事例を通じた結果解釈と報告フォーマットを紹介する。最後に,流通・マーケティング研究におけるQCAの可能性を展望するとともに,研究課題と研究方法の選択・混合について若干の示唆を得ることを試みる。

  • 戸田 裕美子
    2022 年 1 巻 2 号 p. 226-235
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

     社会科学においては,当事者への直接的な聞き取り調査の方法における資料収集が行われている。聞き取り調査の方法は,一問一答のようなインタビュー形式の場合もあれば,対象となる事象に関わる状況について幅広く自由に語ってもらうような対話形式の場合もある。後者のような当事者の経験に関する語りを手がかりとして,何らかの現象に迫る方法は,社会科学においてナラティブ(narrative:語り,または物語)として概念化され,質的研究法の一つとして位置付けられている。本研究では,まず次節で定量的研究と定性的研究の相克に触れ,第3節ではナラティブ研究の特徴を整理するとともに,その一領域であるオーラル・ヒストリー研究とライフ・ヒストリー研究の概観を得る。そして第4節では,ナラティブの問題点について言及し,結語において,こうした方法のマーケティング史研究に対する適用可能性について議論する。

一般投稿
  • ―埋め込み,創発,共有意図性概念を用いて―
    崔 琳源
    2022 年 1 巻 2 号 p. 236-249
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿は,マーケティングにおいてAlderson(1965)から問題視されている個人の行為からどのように集団的現象が生じ,個人がどのように規制を受けるのかというミクロ・マクロリンクの問題をマーケティングの最新視点であるS-Dロジックのサービス・エコシステム(SES)を用いて対処する。第1に,SESの出現した経緯を学説史的にまとめる。SESはマルチレベル的な集約構造になっており,理論的な発展として見るとミクロからメソ,マクロレベルに向けた拡張としてとらえることができる。第2に,集約レベル間はいかにしてリンクしたのかを解明するため,哲学の「創発」と「共有意図性」,経済社会学の「埋め込み」の3つの用語に着目し,概念間の関係を検討することを通じて「SESの創発プロセス」の枠組みを提案した。

書評
  • 2022 年 1 巻 2 号 p. 250-282
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    青木 均『小売営業形態の成立の理論と歴史』同文舘出版,2020 年. (書評者:鳥羽 達郎)

    上沼 克德『学としてのマーケティング―マーケティング学の論理と方法―』同文舘出版,2020 年. (書評者:小林 啓志)

    田中 智晃『ピアノの日本史―楽器産業と消費者の形成―』名古屋大学出版会,2021 年. (書評者:薄井 和夫)

    光澤 滋朗『わが国マーケティングの成立』晃洋書房,2021年. (書評者:神保 充弘)

    矢作 敏行『コマースの興亡史―商業倫理・流通革命・デジタル破壊―』日経 BP 日本経済新聞出版本部,2021 年. (書評者:関根 孝)

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