2023 年 2 巻 1 号 p. 24-33
本稿は,わが国初の「マーケティング」とタイトルされた著書を刊行した上岡一嘉の研究について取り上げた。彼は学生時代から外国語習得に取り組み,社会に出てからは市場調査手法を学ぶとともに,ミクロマーケティング研究に取り組んだ。彼は多くの研究業績を有するが,現在のマーケティング史研究ではそれらについてはほとんどふれられることがない。しかし,彼がわが国におけるミクロマーケティング研究の開拓者として,今日のマーケティング研究における確固たる礎を築いたことは間違いない。また彼は研究者としてだけではなく,実務界において市場調査の普及に努めた。さらに大学教員や経営者として,学生たちには海外に目を向け,努力することの大切さを常に訴え続けた。そこで,彼の業績をあらためて辿るとともに,そこにおいて学ぶことの豊富さを取り上げ,わが国におけるマーケティングの古典ともいえるそれらにあらためて光を当てた。