2023 年 2 巻 1 号 p. 51-67
オルダーソンは生涯,膨大な数の研究を残してきたけれども,彼の代表的な著作は間違いなく『マーケティング行動と経営者行為』(1957)であり,1950年代以降の彼の研究の全容がそこに含まれている。本稿の目的は,日本のオルダーソン研究を基礎として,その書の代替的な読み方を提示することである。より具体的には,荒川(1965a)の視点転換説を批判した,阿部(1971)と光澤(1981)を基礎として,マネジリアルな視点からオルダーソンの理論を再検討し,その解釈にかんする新たな仮説を提示することである。本稿の考察によって,オルダーソン(1957)はマネジリアル・マーケティングの書として優れた体系性と整合性を有することが明らかになる。この点を理解すれば,その著作はまさに戦後のマーケティング研究の源流であり,今後のマーケティング研究にとって実り豊かな示唆が数多く含まれていることがわかるであろう。