2023 年 2 巻 1 号 p. 68-86
本研究は,理論的知識の評価基準を吟味するものである。この理論的知識の評価基準は,学説の整序や理論の修正に大きな影響を与えるものである。先行研究では,理論的知識の成長を測るより良い尺度として,問題の深さという評価基準が提示されている。しかし,問題の深さがどういうものであるかということについて,先行研究では明らかにされていない。それゆえ,問題の深さという尺度が社会科学の理論に適用できるかどうかということも吟味されていない。そこで,本研究では,問題の深さとは何かという問い,問題の深さという評価基準が社会科学の理論に適用できるのか否かという問いに取り組むこととした。このことを通じて本研究で明らかになったのは,より深い問題が先行の理論に比べてより深い理論が抱えることになった矛盾であるということ,問題の深さという評価基準が社会科学の理論に適用できないということである。社会科学の理論を適切に評価するための基準としてはどのような基準を用いればよいのか。本研究では,実在論的意味での必要十分条件という観念によって統制された理論のテスト可能性という尺度を提示した。