2025 年 4 巻 1 号 p. 36-46
本稿では,韓国の市場特性を等閑視した海外市場戦略の限界が浮き彫りになっている。韓国市場は,消費者の買い物パターンや商慣行等が欧米市場と異なり,欧米小売企業にとって適応しにくい環境であった。そのため,欧米から持ち込まれたハイパーマーケット業態が韓国の市場特性や消費者ニーズに適合できなかった。なぜ,韓国消費者やベンダーが地元の小売企業からの購買や取引を優先し,外国資本に対して不信感を抱いたのか。2010年代に入ると,「大型マート」の出店や営業時間の規制が強化され,ハイパーマーケットを主業態として入ってきた外国企業の成長をさらに阻害した。それに対して,地元企業は流通チャネルにおける優位性を活かしながら,消費者から支持を得られた。韓国の地元企業は,自国市場の高い理解力を基に,独自の業態を確立し,成功を収めた。一方で,欧米小売企業は,韓国市場における消費者行動,規制,流通構造への適応を欠いたため,最終的に撤退を余儀なくされた。