2025 年 4 巻 1 号 p. 16-35
本稿は,台湾におけるスーパーマーケット(食品スーパー)の発展プロセスを歴史的視点から段階的に考察し,その特徴と影響要因を明らかにするものである。まず,1963年から1980年代前半にかけての導入期を三つの段階に分けて分析し,次に1980年代後半の外資系企業の進出による発展期を日系および香港系企業の事例に分けて考察する。また,2000年以降に台湾市場に残った日系と香港系スーパーマーケットの実態と現状を明らかにする。台湾スーパーマーケットの形成と発展には,商業資本や政府による流通近代化,食品メーカーの垂直統合,農産物卸業や商業資本の多角化,外資系企業の進出,現地企業によるイノベーションといった多様な要因が絡み合っている。さらに,経済水準と教育水準の向上によるスーパーマーケット利用人口の増加や伝統市場の減少も重要な背景である。これらの要素が複雑に交錯する中で,台湾スーパーマーケットの発展が成し遂げられたことを明らかにした。