2026 年 5 巻 2 号 p. 116-132
本稿は,マーケティング研究におけるQuality of Life(QOL)概念がどのような歴史的経緯を経て導入され,発展してきたのかを学説史的観点から考察することを目的とする。そのために,QOLを生み出す主体,QOLの集計水準,QOLの役割,重視されるQOLの構成次元,マーケティングとQOLとの接合形態という5つの分析視点を設定し,マーケティング研究における6つの研究系譜で論じられてきたQOL概念を比較検討した。その結果,QOL概念はマーケティング思想の展開に応じて位置づけや役割を変化させながら発展してきたことが明らかとなった。また本稿は,QOL概念がマーケティングとその成果との関係を多面的・多層的に理解するための「概念的プリズム」として機能してきたこと,さらに,マーケティング研究が理論的転換を迎える局面において,QOLあるいはその関連概念が繰り返し導入され,マーケティングと社会との関係を再構成する理論的契機として機能してきたことを学説史的特徴として提示した。