2026 年 5 巻 2 号 p. 88-103
本稿は,新制度組織論の理論的展開を整理し,その視点をマーケティング研究に接続する可能性を検討することを目的とする。従来のマーケティング研究は,企業と顧客の交換関係をいかに設計・管理するかという問題を中心に発展してきたが,市場がどのような社会的条件のもとで形成・維持されるのかという制度的側面は十分に検討されてこなかった。本稿では,新制度組織論の主要概念である正当性,同型化,制度変容,制度的企業家,Institutional Workの理論的展開を整理し,制度ロジック多元性の視点から市場を複数の価値原理が交錯する制度的空間として捉える枠組みを提示する。さらに,制度ロジック間のコンフリクトとその調整メカニズムを,フィールドレベル・組織レベル・実践レベルの三層構造として整理し,この枠組みを市場形成,ブランド,消費者行動,企業間関係といったマーケティング研究の主要領域に適用する。