抄録
変形性膝関節症の治療にはまず保存的治療が行われる. 病態は関節軟骨の退行性変化であるため根本的治療法は存在しないが, 比較的症状の軽い初期から中期の関節症は保存的治療が有効であることが多い. しかし保存的治療法に抵抗する症状の強い末期の関節症は手術治療が検討される. 手術治療にも様々な方法があり年齢, レントゲン所見, 活動性等を考慮して術式が決まる. 複数の術式が選択肢に入る場合もあり, 医療者側は複数の術式に習熟しそれぞれの利点・欠点を熟知する必要がある. 手術治療は関節鏡手術, 骨切り手術, 人工関節手術が主に行われている. 関節鏡手術は侵襲が少ないが効果は不確実で治療効果を疑問視する声もある. 骨切り手術は関節機能を温存することができるが, リハビリテーションに時間がかかることや正確な手術を行うことの難しさから人工関節ほど広く行われているとはいえない. しかし近年の様々な工夫により早期荷重が可能になってきた. 人工関節置換術は変形性膝関節症の手術治療としては除痛性, 安定性, 耐久性などの面で非常に信頼性の高い手術として確立されてきた. しかし術後感染や静脈血栓塞栓症のリスクが他の手術より高いことから, 慎重な術後管理と十分なインフォームドコンセントが必要といえる. 本稿ではそれぞれの手術に対し, 適応や利点, 問題点等を述べた. いずれの方法も完全な方法ではなく, 膝関節を元の正常の状態に戻すことはできない. 保存療法の先に手術療法があるが手術療法の限界も認識する必要がある.