抄録
変形性膝関節症に対する運動療法は2000年代に入って本格化した多数のRCTによって, 現在その有効性のエビデンスは確立した. われわれは1980年代後半より, SLR運動, 外転筋運動, 内転筋運動の3つの下肢等尺性筋運動を中心とする運動療法を行ってきた.
その効果が確立した一方で, 効果の機序については不明のままであった. しかし, 2000年代に入ってから, 多数の基礎的研究が行われるようになりその機序は明らかになりつつある. 培養関節軟骨細胞を用いたin vitro実験から適切な運動を負荷された炎症軟骨細胞からは炎症性サイトカインの放出は減少し, 抗炎症性サイトカインが産生されるようになる. また, 炎症によって低下したコラーゲン等の基質合成は適切な運動負荷によって回復することも指摘されている. このように細胞の変形をきたす運動刺激は適切な刺激 (歪) の範囲であれば炎症抑制, 基質合成に働くことが明らかとなった.