Journal of Mammalian Ova Research
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卵管上皮細胞又は顆粒膜細胞の単層がブタ卵母細胞の体外成熟および受精率に及ぼす影響
康 承律辻井 弘忠保科 和夫
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1995 年 12 巻 1 号 p. 23-28

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抄録
卵管上皮細胞と顆粒膜細胞を4~6日間培養し,単層細胞シ-トを前もって形成させた.採取した卵母細胞をwell当り10~15個ずつこれらフィ-ダ層上に導入し,又は培地のみに入れて48時間成熟培養を行った.各実験区の培養卵母細胞の半分は成熟度判定に用い,残りは凍結射出精液を用いた体外受精に供し位相差顕微鏡下で受精状況を調べた.顆粒膜細胞との共培養によって卵母細胞の成熟率が対照区に比べて有意 に高く(76% vs 55%; p<0.05),卵管上皮細胞区(69%)とは差がなかった. 精子侵入率においては,顆粒膜細胞区(56%)に比べて対照区(82%)で有意に(p<0.01)高い価を示し,卵管上皮細胞区(68%)とは差がなかった.卵管上皮細胞(38%)あるいは顆粒膜細胞(46%)と共培養した卵母細胞で単精子侵入率が対照区(79%)より低かった(p<0.01).卵管上皮細胞と共培養により雄性前核形成が顆粒膜細胞区に比べて有意に高い値を示したが(37% vs 19%; p<0.05),対照区(28%)とは差が認められなかった.本研究において,体外受精後に核が未成熟段階にある一部の卵母 細胞の細胞質で精子核の膨潤あるいは雄性前核の形成が見られた.これらの結果から,卵管上皮細胞と顆粒膜細胞の単層は単精子侵入率を高める有効な方法であり,卵管上皮細胞の単層は細胞質の成熟を促進し受精後に雄性前核の発育に適切な条件を与えたことが示唆された.また,卵母細胞のいずれの成熟段階のものでも精子侵入後雄性前核が形成されることが判った.
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© 1995 日本卵子学会
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