抄録
雌パンダの場合,約50%は双子を出産する.また,パンダの卵巣には「1卵胞2卵子」という卵胞が見られる場合がある.そこで、この双子と「1卵胞2卵子」との間に関係があるのか否かを追究するため,2卵子を含む卵胞を採取して,その微細構造を電子顕微鏡によって詳細に観察した.実験材料として,老衰と疾病のために死亡したパンダの卵巣から卵子を採取して,その形態的特徴を微細構造学的に検討した.その結果,「1卵胞2卵子」がいくつか観察された.とくに,このような卵子で特徴的であったのは,卵子細胞質内に多量の卵黄粒が見られたことである.また,2卵子間には隔壁はなく,1つの顆粒層細胞内に存在することが確認された.しかし、今回の組織学的観察の結果からだけでは,この「1卵胞2卵子」とパンダの双子出産と関連があると結論づけることは困難であるが,その可能性は極めて高いように思われた.