Journal of Mammalian Ova Research
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総説(特集:卵子のエネルギー代謝 ―ミトコンドリア機能について―
受精時におけるカルシウムイオン制御機構
伊藤 潤哉
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2012 年 29 巻 4 号 p. 146-154

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抄録

ほとんどすべての動物種において,受精時には卵内カルシウムイオンの上昇が認められる.このカルシウムイオンの上昇は,第二減数分裂からの減数分裂再開,表層顆粒の放出および雌雄前核の形成といった“卵の活性化”を引き起こすことが知られている.特に哺乳動物の受精においては,反復的なカルシウムイオンの上昇(カルシウムオシレーション)が起こる.近年の研究により,カルシウムオシレーションは卵の活性化だけでなく,その後の発生にも影響を及ぼすことが示唆されている.カルシウムオシレーションは精子内に存在する卵活性化因子(phospholipase C zeta, PLCζ)が卵細胞質内に放出されることで起こると考えられており,PLCζによりPIP2が加水分解され,その結果生産されたinositol 1,4,5-triphosphate(IP3)が小胞体上にあるIP3受容体に結合し,小胞体内に蓄積されたカルシウムを卵細胞質内に放出することで誘起される.我々は,実験動物(マウス)あるいは家畜(ブタ)をモデルとして用い,特にPLCζとIP3受容体の機能に着目し研究を行ってきた.本稿では,これら分子に関する最近の知見を紹介したい.

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© 2012 日本卵子学会
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