抄録
卵母細胞が受精可能な卵子へと発育する過程でミトコンドリアの細胞内局在は大きく変動する.そこで,その局在の詳細を明らかにするために成長および成熟過程の卵母細胞におけるミトコンドリアの生細胞観察を行った.成長期の卵母細胞におけるミトコンドリアは細胞膜直下および核周辺に特に集中しているのに対して,成長を完了した卵母細胞では細胞質全体に拡散して分布しており,同一の細胞周期にある卵母細胞においても成長段階に応じてミトコンドリアの細胞内局在は異なることが分かった.また,成熟過程における卵母細胞のミトコンドリアをGFPでラベルし経時的に追跡したところ,局在のダイナミックな再構築が観察され,さらにそれは微小管の影響を受けていることが分かった.こうしたミトコンドリアの時間・空間的な制御は受精やその後の発生を支持するために必要と考えられる.