経営哲学
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投稿論文
宮古島所在の株式会社パラダイスプランにおける理念浸透 ― 統合的経営理念浸透メカニズムの探究 ―
福田 充男
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2021 年 18 巻 1 号 p. 2-16

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【要 旨】

本研究では、Peter M. Senge (2006) 著「The Fifth Discipline」で提示されたディシプリンの1つであるシステム思考のうちの「問題のすり替わり構造」を主たる分析ツールとして援用し、沖縄県宮古市所在の自然塩製造・販売業者の経営理念浸透メカニズムの解明を試みた。この事例分析を通して、理念浸透を促進する「掲揚」と「実践」と「会話」という3つの行為が、相互に双方向に作用しあうという統合的学習モデルを、経営トップと経営チームと一般社員が共通して保有し、重層的なフラクタル構造を維持するときに、より深く組織に理念が浸透するという理念浸透メカニズムのモデルが導出された。

1.はじめに

経営理念浸透の先行研究では、理念の掲揚・実践・会話と要約され得る3つの行為が、経営理念浸透を促進するということが指摘されてきた(梅澤, 1993; 金井・松岡・藤本, 1997; 高尾・王, 2012; 田中, 2016; 瀬戸, 2017; 柴田, 2017)。たとえば、金井・松岡・藤本(1997)が分類した3つのモデルの内、「強い文化モデル」では経営トップの「掲揚(価値観を結晶化し、行動や言葉で理念を示す行為)」、「観察学習モデル」では他の成員の「実践(理念を行動に落とし込むモデリング)」、「意味生成モデル」では相互接触を通した「会話(ピア・ディスカッションや内省)」に強調点がある。けれども、これらの3つの行為が、いかに相互に双方向に作用しあって理念を浸透させるかというメカニズムにかかわる研究業績は、管見の限りでは見当たらない。

そこで、本研究では過疎化の流れが顕在化している沖縄の離島である宮古島で、全社を挙げて理念浸透に取り組み、急速に業績を伸ばしている「株式会社パラダイスプラン」を分析することで、統合的な理念浸透メカニズムの理論モデルの抽出を試みる1) 。2018年4月6日から2019年5月24日まで、宮古島本社、製塩工場、那覇営業所、塩屋平和通り店、塩屋なんばパークス店を訪問して、代表取締役である西里長治及び、5人の経営陣と若手及びミドルの8人、計14名に対して対面調査を行ない、適宜メールやWeb会議でそれらの対面調査を補完した。

経営理念には、研究者の間にも一致した定義がないが、本研究では、経営理念を、組織の方向性を組織内外に示す概念・イメージ・方策と定義する。また、理念浸透を、理念が組織成員の意思決定と行動に反映されている状態と定義する。

2.分析ツール

2.1 システム思考

Peter M. Senge (2006) の提唱した「学習する組織」(目的に向けて効果的に行動するために、集団としての意識と能力を継続的に高め、伸ばし続ける組織)を援用して、パラダイスプランの理念浸透メカニズムを分析する。その理由は、「学習する組織」の学習内容を経営理念とし、5つのディシプリン(習得すべき理論および技術の総体)の1つであるシステム思考を援用することによって、掲揚・実践・会話の構造的相互作用のパターン全体を明らかにすることができると仮定できるからである。表1は、5つのディシプリンの定義一覧である。

表1 学習する組織の5つのディシプリン

出所:Senge (2006)

2.2 問題のすり替わり構造

なお、本論では事例分析のためのツールとして、システム思考のうちの「問題のすり替わり構造」を主に援用することにする。なぜなら、理念がしばしば個人または組織の行動や意思決定に反映されないのは、根本的な解決策を適用せず、対処療法的解決策で対応しようとするからである。

たとえば、継続的な対話というような「根本的な解決に向かう取り組みに伴う負担」を避けて問題をすり替え、組織ビジョンの一方的押し付け等の「手軽な応急処置」に依存するようになるとする。そうすると、一時的に症状が緩和されて、個人が組織ビジョンを心に留めるようになっても、個人の「コミットメント」(責任を感じて共有されたビジョンを実現させる取り組み)が育まれないため、組織ビジョンと個人ビジョンの乖離という「根底にある問題」は扱われずに悪化する。根本的な解決策のループ(因果関係を示す循環)は、対話のために「遅れ(有効性判明にかかるより長い時間)」が生じるが、はるかに効果的に働く。このような問題構造を、Senge (2006)は「問題のすりかわり構造」と呼んでいる。図1は、Senge (2006) の「問題のすり替わり構造」に、「好循環への移行ループ」を付加したシステム図である。これを付加したのは、1つの行為から他の行為への強化作用を明示するためである。

図1 問題のすり替わり構造

出所:Senge (2006) を元に作成

上のループは、「a) 根本的な解決策」、下のループは「b) 対処療法的解決策」のバランス型ループ2) である。右端の下から上に向かうループは「c) 複雑性を理解することによって問題のすり替わりを矯正し、b) の悪循環からa) の好循環に移行させるループ」である。上の事例では、「c) 好循環への移行」は、「共有ビジョン」によって、個人ビジョンと組織ビジョンが結びつく会話をすることで各組織成員が自分事として組織ビジョンを理解し、結果として包括的な理念の掲揚を強化する過程である。これは会話が掲揚を強化する事例であるが、後述するように、実践は「共有ビジョン」により掲揚を強化する。また、実践は「自己マスタリー」により強化され、会話は「メンタルモデル」によって強化されると考えられる。

根本的な対応を強めること、そして(あるいは)対処療法的な対応を弱めることによって、「問題のすり替わり」構造に対応できるし、しかもそこが必ず「レバレッジ3) 」となるとSenge (2006) は述べている。以下、パラダイスプランの事例において、掲揚、実践、会話という3つの行為のうちの1つが、いかに他の2つの行為によって強化されているかを検証する。

3.理念浸透システムの展開(株式会社パラダイスプランを事例として)

3.1 株式会社パラダイスプランの理念

理念浸透システムの展開事例として、株式会社パラダイスプラン(以下、パラダイスプラン)を取り上げる。代表取締役を務める西里長治は、2000年に地元宮古島の海水から、「雪塩」と称するパウダー状の自然塩を製造する事業を開始した。同年に、雪塩が「含有するミネラル成分の種類が世界で一番多い塩」としてギネスブックから認定されたことを皮切りに、全国的な自然塩ブームに乗って、製塩業だけではなく、雪塩を使った菓子・化粧品などの製造、「塩屋(まーすやー)」というブランド名の塩専門店の展開、農産物直営店「島の駅」経営など、関連事業を拡大し、現在では従業員240名(2019年年末時点)、年商28億円(2019年度)の規模に達した。塩屋は2020年7月現在、那覇に3店、石垣に1店、東京に1店出店しているし、島外から多数の従業員を採用しているが、本社を宮古島に置き続けている。それは、以下に述べる会社理念に基づいた決断である。

西里は、「宮古島を豊かにすること」が会社理念だと述べている。その意味は、宮古島住人および出身者の自信と誇りを高めると共に、島民の所得を向上させて生活を豊かにすることである。そして、この理念は、パラダイスプランが、世界中から自社の商品やサービスを選んでいただける企業となることによって具現化すると考えられている。また、その前提として世界に通用する人材を育てることが理念の内容として含まれている。人材育成と会社の成長と地域及び関係者の誇りや可処分所得向上が一体的に捉えられていることがパラダイスプランの理念の特徴である4)

3.2 経営トップの理念学習

経営トップである西里個人の理念浸透は、経営理念浸透を促進するとされる3つの行為、すなわち、「理念の掲揚」と「理念の実践」と「理念の会話」が、相互に双方向に作用しあう学習モデルだと分析することができる。

1) 西里個人の「実践」による「掲揚」の強化

西里は、企業の経済性を向上させるために、目先の利潤を追い求めるならば、顧客の信用を失って経済性を低下させると述べていた5) 。しかし、宮古島住人および出身者の自信と誇りを高めると共に、島民の所得を向上させて生活を豊かにするという社会性(社会課題の解決)を包括する経済性を追求するときに、住民とともに企業もまた長期的な経済成長を遂げると信じている。

たとえば、西里が発案して事業化した「島の駅みやこ」に作物を出荷するメロン農家は、従来よりも約1.5倍の収益を得るようになっただけでなく、客の良い反応を知らせてもらえることで誇りをもって仕事をするようになった6) 。地元農家を支えるという社会性追求を含めた事業「実践」の成功が理念の包括的「掲揚」を強化した。

2) 西里個人の「会話」による「掲揚」の強化

また、西里は、一方的に組織ビジョンを押し付けても、個人と組織がビジョンを共有することはないと考えている。そのため、「寺子屋」と名付けられた毎月の全社的な研修会や社員との個人的な交流の場で、組織ビジョンと個人ビジョンが結びついた自らの証言を含めた「会話」を社員とすることで、組織のビジョンに対する自分の所有者意識が高まり、経営トップ自身と社員たちの包括的な「掲揚」が強化されていると考えられる。

3) 「掲揚」の強化プロセスを描いたシステム図

問題のすり替わり構造を援用して、西里個人の「実践」及び「会話」が、「掲揚」を強化することを示すシステム図(図2)の描写を試みた。

図2 理念の掲揚、強化プロセス

まず、西里の「実践」による「掲揚」の強化プロセスについての説明を試みる。調整または補正しようとする問題症状を、組織の経済性向上と設定し、そのプロセスを、左部の斜め上下に配置した2つの楕円で表した。下のループは、経済性向上という問題の症状にすばやく対応するために、目先の利潤拡大のみを追いかけ、社会性を無視して経済性追求のみを実践する対処療法的解決策のバランス型ループである。一時的には経済性は向上するが、やがてブランドを毀損し、顧客や取引先の信頼を失墜させ、組織の求心性を低下させるなど、長期的には経営成果を減じるプロセスを表している。一方、上のバランス型ループは、「共有ビジョン」により、二者が統合された理念の掲揚を目指す永続的で効果的で根本的な解決策のループである。「経済性と社会性を同時追求するというビジョン統合」を目指す際の探求の効果が明らかになるまでには「遅れ」が生じるが、社会課題の解決を目指す社会性追求が、長期的には企業価値を高めるようになると考えられている7) 。実践から掲揚に至る図2の左端の「上昇して右に向かう矢印」は、「システム思考」により「問題のすり替わり構造」を見抜き、「共有ビジョン」によって社会性を包括した高尚な理念を実践することで、「経済性と社会性を包括する理念の掲揚」を強化するループである。実践すればするほど、長期的には経済性が向上し、その結果として理念の掲揚が強化される。

次に、西里の「会話」による「掲揚」の強化プロセスについての説明を試みる。図2の右部の斜め上下に配置した2つの楕円で表しているプロセスは、掲揚が会話によって強化されることを示すシステム図である。こちらも、「問題のすり替わり構造」によって説明できる。問題の症状を、組織ビジョンと個人ビジョンの乖離と設定すると、対処療法的な解決策は、個人ビジョンの無視となる。その結果、会話の話題が「組織ビジョンの布教(押し付け)」ばかりになり、「コミットメント」が育まれず、組織成員はビジョン遂行の情熱を喪失してしまう。一方、根本的解決策は、「共有ビジョン」によって促される継続的な対話のために「遅れ」が生じるが、多様な個人ビジョンを超越し、統合することで、共有ビジョンが明瞭化され、組織ビジョンと個人ビジョンが包括的に掲揚されるようになる。会話から掲揚に至る図2の右端の「上昇して左に向かう矢印」は、好循環への移行ループである。「システム思考」により、「問題のすり替わり構造」が見抜かれ、「共有ビジョン」によって、組織成員が個人ビジョンと組織ビジョンが結びつく話題を会話に取り上げるようになり、結果として「組織ビジョンと個人ビジョンが結びついた理念の掲揚」を強化するというプロセスである。会話をすればするほど、各組織成員が自分事として理念を理解するようになり、その結果、コミットメントが増大して掲揚が強化される。

4) 西里個人の「掲揚」による「実践」の強化

西里は「パラダイスフィロソフィ」と称する31項目から成る企業価値をまとめ、それを朝礼で全社員が一日一項目ずつ学ぶ仕組みを作っている。このような現実をビジョンに近づける「掲揚」が、彼自身の理念具現化願望を強め、ビジョンに向かう「実践」を強化している。

5) 西里個人の「会話」による「実践」の強化

また、「寺子屋」やその他の社員との交流の機会に、理念達成に関する「会話」をすることで、理念具現化願望が社員と共有され、理念の「実践」が強化されている。

6) 「実践」の強化プロセスを描いたシステム図

問題のすり替わり構造を援用して、西里個人の「掲揚」及び「会話」が「実践」を強化することを示すシステム図、図3を描いてみた。

図3 理念の実践、強化プロセス

図3は、掲揚と会話が実践を強化することを示すシステム図である。掲揚からの強化と会話からの強化の問題の症状を、いずれも理念と現実の乖離と設定する。対処療法的な解決策は、前者の場合、ビジョンを現実に合わせて引き下げる掲揚であり、後者の場合は、そうせざるを得なかった言い訳を話題に会話を展開することで自己正当化する対応である。いずれの場合も、心から望んでいるビジョンを結果として捨ててしまうプロセスである。現実を追認してしまうのは、実現しそうにないビジョンに気力が萎えてしまい、感情的緊張(落胆や不安)を解消しようとするためである。一方、根本的な解決策は、「自己マスタリー」により、特殊なレベルの熟達に達するようになるプロセスである。「創造的緊張」(ビジョンと現実の乖離を縮めようとする張力)を生み出し維持するためには「遅れ」が生じるが、現実をビジョンに近づける実践、または理念達成を話題とする会話をすることにより、本当に望んでいる結果を見るようになる。好循環への移行プロセスでは、まず、「システム思考」により、「問題のすり替わり構造」が見抜かれる。その上で、「自己マスタリー」によって、現実をビジョンに近づける掲揚、または理念達成にかかわる会話をすることで「理念の実践」を強化するようになる。ビジョン達成を追求する掲揚や会話をすればするほど、理念具現化の願望が強化・共有されて、理念の実践が強化される。

7) 西里個人の「掲揚」による「会話」の強化

西里は、信奉理論(口にしている目標・仮説・価値観)が理念と一体化しているかどうかを自問しながら、揺るぎない決意をもって理念を「掲揚」する戦いを続けている。それは、本質的な目標や価値観について社員と一緒に忍耐強く確認する戦いだと西里は言う8) 。その戦いゆえに、見栄えを優先しようとするなどの使用理論(行為に反映される暗黙の諸前提)の欺瞞が表面化され、理念と行動をどう一致させ続けるかというテーマを話題とする「会話」が強化されていると考えられる。

8) 西里個人の「実践」による「会話」の強化

経営トップの西里自らが率直に自分の非を認めて告白するという「実践」を通して、メンタルモデルが修正され、理念と行動の乖離を解消する「会話」が強化されている。たとえば、経営チーム会議で、西里がした発言に対して、チーム全員が、それは「フィロソフィ」に悖るとして反対したことがあったが、西里は、上司の権威よりも上位の理念を優先する部下の態度を受け入れ尊重した9) 。このエピソードは西里自身が公にしていて、寺子屋他の社員同士の交流時に、理念と行動の乖離を解消する「会話」の促進に寄与していると考えられる。

9) 「会話」の強化プロセスを描いたシステム図

問題のすり替わり構造を援用して、西里個人の「掲揚」及び「実践」が「会話」を強化することを示すシステム図(図4)の描写を試みた。

図4 理念の会話、強化プロセス

図4は、掲揚と実践が会話を強化することを示すシステム図である。掲揚からの強化と実践からの強化の問題の症状を、いずれも、「信奉理論と使用理論の間の乖離」(Argyris and Schon, 1974)と設定する。対処療法的な解決法は、理念と合致しない信奉理論を掲揚したり、習慣的な防御行動を取ろうとしたりするプロセスである。本音を隠すようになるのは、学習の必要性を認識する時にも、「自分の見解の背後にある考えをさらけだすことで間違いを指摘される脅威」(Argyris, 1985)を感じると、それに反応して、見栄えを気にして「学習の必要性の認識を減らす」ことに走り、面倒なことにかかわらないように自己防御しようとするからである。一方、根本的な解決策は、理念と行動の乖離を解消するために会話するプロセスである。「メンタルモデル」によって、使用理論と信奉理論の食い違いに気づき、偽善を捨てて、人の目を気にせずに本音で話すようになるためには「遅れ」が生じるが、その経路を通るときだけ真の学習に至る。好循環への移行プロセスでは、まず、「システム思考」により「問題のすり替わり構造」が見抜かれる。その上で、「メンタルモデル」によって、揺るぎない決意をもって理念と一体化された信奉理論を掲揚することや、「自分の行動を振り返ったり、自分の考えの主張と相手の考えの探求のバランスを取ったりする実践」に取り組むことが促され、理念と行動の乖離を解消する会話が強化される。また「メンタルモデル」によって、学習の必要性を認めて掲揚したり実践したりすればするほど、使用理論が表面化され、メンタルモデルが修正されて、理念を行動に移すというテーマを扱う会話が強化される。

3.3 経営チームの理念学習

パラダイスプランの主要な経営チームメンバーは西里以外に4人いる10) 。彼らも西里と同様に、掲揚、実践、会話という3つの行為のうちの1つが、他の2つの行為によって強化されるという学習構造を保持している。以下、経営トップの説明と同じ順で説明する。

1) 「実践」による「掲揚」の強化、及び「会話」による「掲揚」の強化

雪塩事業部本部長のIは、塩屋の職員を売り上げ増加、つまり「経済性」向上の道具として扱うのではなく、人間としての成長を助けるという「社会性」を意識して育成している。そのような理念の「実践」が、中長期的な店の売り上げ向上に結びついていて、社会性と経済性を同時追求する理念の掲揚が強化されている11) 。物流事業部本部長兼品質管理室室長のNは、同僚や部下との懇親の場や寺子屋で会社のビジョンと個人のそれが結びつく「理念の会話」をするのだが、その時に相互に共感し会社へのコミットメントが増大するという主旨の発言をしていた12) 。会話が包括的な「理念の掲揚」に結びついた事例である。

2) 「掲揚」による「実践」の強化、及び「会話」による「実践」の強化

非常勤の執行役員で塩屋の人材育成、商品開発、広告宣伝の責任者だったAは、「掲揚」された理念を実現させるために「実践」するなどということは、あえて言葉にする必要もないほど当たり前のことだと述べていた13) 。「島の駅」事業部長のYは、自ら立てた行動計画をあきらめずに実行したことで売上目標を達成したという自分の経験を寺子屋等で分かち合ってから「会話」することで、理念を具現化したいという願望が部下と共有されて「実践」が強化されると話してくれた14)

3) 「掲揚」による「会話」の強化、及び「実践」による「会話」の強化

前出のN本部長は、部下が課題遂行を容易に諦めてしまうときに、視点を変えて語りかけ、「掲揚」された理念に注目させることで、理念と行動の乖離を解消する「会話」を主導すると述べていた15) 。また、前出のI本部長は、塩屋の売り場で指導するときに、「モチベーションが低い状態で取り組まれた実践」を部下たちが自分で振り返って使用理論を表面化することができるように促し、世界中から選ばれる企業になるためにどう行動するかという「会話」を、社員同士でするように指導している16)

3.4 理念学習インフラ

パラダイスプランは、経営トップや経営チームの垂範・学習促進という属人的要素だけでなく、「掲揚・実践・会話」の各行為を強化する学習インフラを有していて、このインフラもまた、経営トップの学習構造や経営チームの学習構造と相似していることが観察された17)

掲揚という行為を強化するインフラは7種類ある。第1に、各部署の同一現場で毎朝開かれる朝礼での「パラダイスフィロソフィ」の朗読がある。朝礼の日が、某月の15日だったら、15番目のフィロソフィが朗読されるというように、年間を通して計画的に理念を学ぶ仕組みがある。第2に、西里が理念をどう理解し経験しているかを綴った「社長日報」と名付けられたブログが毎日更新され、全社員に公開されている18) 。第3に、新入社員と中途採用者を対象に開く「西里学校」がある。入社後半年間、毎月、1回3時間半の研修が開かれ、社長が経営理念を説明する。第4に、理念の明確化を目的とする「チームセミナー」と称する1泊2日、または2泊3日の研修会が随時開かれている。経営チームだけで開いたり、部門別に開いたり、新商品開発などのプロジェクトごとに開くこともある19) 。第5に、各部門のリーダーたちを対象とした経営チーム主導の「ビジョン会議」がある。「チームセミナー」で明確化された理念に添った中長期計画を基に、年間計画を策定し、その上で、さらに下位の部門の年間及び月間目標設定に落とし込む。第6に、「チームセミナー」と「ビジョン会議」で話し合われた3ヵ年計画と年間目標を、一年に一度「経営方針発表会」で、部下を持つ全リーダーに向けて西里が発表する。第7に、「寺子屋」のセッションの冒頭に15分ほど、西里または数人のファシリテーターが、「パラダイスフィロソフィ」の紐解きと呼ばれている解説をする。西里はその15分の紐解きのために丸一日準備をすると述べていた20)

現場における実践という行為を強化するインフラは3種類ある。それらはいずれも、社員が自分で定期的に行動計画を策定し、自ら達成度を評価し、その上で、次の行動計画を策定するという「自省と目標設定の循環システム」である。第1に、朝礼時になされる個人レベルの1日単位の行動計画確認がある。毎朝の自己吟味は習慣化され、朝礼以外でも個別に多様な状況下で遂行されていることが伺える。営業のTは、毎日自主的に始業1時間前に出社し、その日1日の自分の業務計画を立てるのを楽しみにしていると述べていた21) 。経営企画室のMは、自宅で風呂に入っているときに、社内の人間関係について振り返り、以降の関わりについて思い巡らすと述べていた22) 。第2に、アメーバ会議での小集団レベルでの月単位の行動計画確認である。アメーバとは、稲盛和夫が提唱する社内の部門別採算制度の最小単位である。西里は稲盛から直接薫陶を受けて、アメーバ方式を自社に導入した(産経新聞, 2017)。パラダイスプランには2019年4月の時点で43のアメーバがあるが、各アメーバーのリーダーが、自分が責任を負っている小集団の目標を立て、自省と目標設定の循環を通して小集団の目標を達成していく。第3に、「チームセミナー」のときになされる経営チームによる年単位の自省と目標設定が挙げられる。

会話を強化する学習インフラは3つある。第1に、「寺子屋」がある。全社員約240人が、毎月半日割いて参加する。4つまたは6つのスロットが用意され、そのどれかに月に1度参加することが例外なく義務付けられている。西里社長は、寺子屋が会社の組織風土を作るための最重要の仕組みだと述べていた23) 。部署や年齢や役職を混ぜ合わせた席順にして、各自が自由に本音を話して議論することで視野を広め、その上で連帯することを目指すのだと言う24) 。第2は、朝礼のときに朗読されたフィロソフィについて参加者の1人が感想を述べることだ。教えようとしないで、ただ感想を述べるように指導されている。また、他の参加者が感想の感想を述べる場合もある。第3は、アメーバやその他の会議中になされる会話である。パラダイスプランでは、虚心坦懐に理念について話すことが多くの社員の習慣となっていて、職務範囲内の会議や食事会だけでなく、自発的な飲み会などの役割外行動時にも盛んな議論が展開されている。会話を強化する学習インフラは、いずれも、Senge(2006)の「チーム学習」を土台とした「ダイアログとディスカッション」の両方を組み合わせたシステムとして説明することができる。

図5は、パラダイスプランの理念学習インフラをまとめた図である。

図5 パラダイスプランの理念学習インフラ

3.5 若手・ミドルの理念学習

経営トップやや経営チームの学習と同様に、理念学習インフラの中で働く社員たちも、掲揚・実践・会話という3つの行為の相互作用によって学習している。

1) 「実践」による「掲揚」の強化、及び「会話」による「掲揚」の強化

経営企画室のHは、聴聞調査した時点で入社2ヶ月目だったが、次のように述べていた。「目的なのか?手段なのか?」というフィロソフィの16番目の言葉を心に留めながら業務を「実践」するときに、お客様を喜ばせるという仕事の理念を同僚に対して「掲揚」できるようになった25) 。大卒入社で10年を経過した営業第1グループのOは、フィロソフィの20番目の項目である「脳みそから血が出るくらい考える」という言葉を、寺子屋という「会話」の場で話し合ったとき、熟慮して仕事にも生活にも取り組むという理念の意味が明確化し、「掲揚」しやすくなったと述べていた26)

2) 「掲揚」による「実践」の強化、及び「会話」による「実践」の強化

営業第1グループの中間管理職であるTは、部下に目標管理ツールを持たせて、毎日、「掲揚」された理念を「実践」しているかをチェックする習慣を習得するようにと指導し、自分も定期的に達成度合を尋ねることで理念を「実践」する力を高める工夫をしていると述べていた27) 。調査当時、塩屋なんばパークス店店長であったKは、前出のOと同期で入社10年目だったが、「そこまでする給料をもらっていません」と言って食ってかかる新人に、「あなたの給料ならどこまでやってもらえるの」と尋ねた。その後「会話」を重ね、理念の「実践」のためにチームにとって必要な人材だということを納得してもらったと述べていた28)

3) 「掲揚」による「会話」の強化、及び「実践」による「会話」の強化

管理部で人材採用を担当している入社3年目のHは、東京の大手デパートからの転職組だが、宮古島に移住して勤務し始めた当初は、遠慮して自分の意見表明を控えていた。しかし、「掲揚」された理念の1つの形であるフィロソフィの7項目目にある「全員参加で経営をする」という言葉に後押しされて、自分の考えを述べるようになったら、かえって建設的な「会話」ができるようになったと述べていた29) 。調査当時、宮古島にある「雪塩ミュージアム」という観光施設の責任者だったFは、西里社長から、施設の内側の課題ばかりに注意を向けないで、会社内他部署に客のニーズ動向などを情報発信するようにと言われ、「実践」の振り返りを指示された。当初彼女は、社長の言葉に反発したが、自らの行動を振り返って使命を確認し、他の販売店と情報を共有する「会話」をするようになったと話していた30)

3.6 三層間の相互作用 ― チーム学習 ―

パラダイスプランには、経営トップ、経営チーム、そして、「理念学習インフラで学ぶ若手及びミドル」という三層のリーダーシップ構造が存在し、各々の理念学習モデルが相似していることを見てきた。調査を続けるうちに、それらの三層のモデルが、相互に作用していることと、その作用の仕方が対話的であることが観察された。

第1に、経営トップの学習モデルが経営チームの学習モデルに、どのように作用しているかを聴聞調査から検証する。西里は、自分の考えを押し付けないで部下の話をよく聞き、部下の考えを尊重し、部下が自分で学ぶ余地を空けておくという考え方で部下に接していると述べていた31) 。西里のアプローチは、相互に議論することを通して最善の考えを追求するというSenge (2006) の「チーム学習」のディシプリンに酷似している。

西里は経営チームからの尊敬を受けている。かつて経営チームの一員で、現在も寺子屋のファシリテーターを務めているMは、沖縄の伝統文化振興のために時間を割きたいと申し出て、社長から許しを得、現在は役職のない社員として残業と出張免除で働いている。彼は、西里が自分の夢の実現を応援してくれたことに謝意を表していた32) 。社員の夢の実現が社長の願いでもあるということを、経営チームの1人ひとりが理解していると考えられる。

また、西里が経営チームに期待していることは、権力を振るって部下に命令することではなく、彼にとって大事なスタッフを育成することだと述べていた33) 。西里は、自ら模範を示すことで、経営チームのメンバーが、経営トップと相似した学習モデルを保持するように影響を与えていると考えられる。

第2に、経営チームもまた、強制や誘導ではなく対話を通して社員を育成しようとしていると観察される。

前出のOが、ブランドショップで安易に売り上げを拡大しようとしていることを、経営チームのAが気づいたときに、アメーバのリーダー会議で、AがOに率直な質問をした。それは、頭ごなしの指示ではなく、業務の目的や、店舗の使命を想起させるための質問だったとOは述懐していた34)

また、雪塩BS事業部本部長のIは、自分が直接かかわらないところで、社員が自発的に考えて、良いと思ったことを実行することを促している、と述べていた35) 。なるべく指示しないで、「こうしたら面白いと思わないか」などと問いかけたり、いくつかの選択肢の中から自分で選ばせたりしているそうだ。

第3に、経営トップが学習インフラの中で学ぶ若手やミドルと有機的に結びついて一緒に成長している事例を1つ挙げておく。

調査当時、経営企画室で総務全般に責任を持っていたSは、社内ですれ違いざまに、社長が突然脈絡なしに自分の仕事をほめ始め出したというエピソードを紹介してくれた。Sは、社長の振り返りや決断や新しい行動表現が直接的に社員に伝わり、それが社員に模倣されていくと述べていた36)

4.考察

4.1 統合的理念学習モデル

パラダイスプランの経営トップと、経営チームと、学習インフラの中で働くミドルや若手を、「学習する組織」(Senge, 2006)の「システム思考」、特に「問題のすりかわり構造」を分析ツールとして用いて解析した結果、すべての層が、相似した「掲揚、実践、会話という3つの行為が相互に強化しあって理念を浸透させるという統合的な学習モデル」を持っていると推測された。

図6は、「学習する組織」の5つのディシプリンによって、理念浸透の3つの行為がどのように相互に強化し合うのかを、「システム思考」によって好循環に移行するループだけを抜き出して描いた図である。「共有ビジョン」を、掲揚を強化する主要なディシプリン、「自己マスタリー」を、実践を強化する主要なディシプリン、「メンタルモデル」を、会話を強化するディシプリンとして描写した。「チーム学習」は、行為間の相互関係ではなくて、主に会話という行為を有効にするディシプリンだと考えられる。

図6 掲揚・実践・会話の相互作用からなる理念学習モデル

4.2 フラクタル構造とチーム学習

パラダイスプランは、野中・児玉・廣瀬 (2012) が提示するフラクタル性を有する組織の特徴を備えていた。部分から全体に発信し、全体から部分へとフィードバックするコミュニケーションと協働がなされていた。各層が相互に対話的に作用し合うことで学習構造が共有されていき、三層のどのレベルにおいても自律的に理念が掲揚・実践・会話されるようになったと考えられる。

図7は、経営トップ個人が持つ「掲揚・実践・会話の相互作用からなる学習モデル」と相似した形を、チーム学習によって、経営チームも、「経営トップとの接触度合いがより少なくて主に学習インフラによって学習する社員たち」も重層的に持つようになったことを示すシステム図である。経営トップが経営チームを通して学習インフラに作用するルートと、経営トップが直接的に「学習インフラの中で学習する社員たち」に作用するルートの両方を描いた。

図7 統合的でフラクタルな理念浸透メカニズム

経営トップ自らが、理念を掲揚し実践し会話し、そこに生じる相互作用によって理念を学習するという営みそのものが、対話的な関与を通して、時間経過に伴って、まるで生物が成長するように、経営チームや一般社員に順々に影響を与え、彼らもまた経営トップと相似した学習モデルを形成するに至ったと考えられる。パラダイスプランのフラクタル性は、経営トップである西里が、理念学習のために社員に提供した学習内容やツールや環境が、その展開を促進した成果ともいえるのだが、より根本的には、西里の自己学習そのものが社員を触発し感化した結果であると考えられる。

4.3 学習インフラの断片化

三層のリーダーシップ構造のどのレベルの学習モデルも相似している一方、実践を強化する学習インフラの1つであるアメーバ会議と、会話を強化する学習インフラである寺子屋については、フラクタル性が欠如していると考えられる。

アメーバ会議以外の「実践を強化する学習インフラ」の1つである朝礼は、掲揚に当たるフィロソフィの朗読、実践に当たる行動計画の更新、会話に当たる「朗読されたフィロソフィに対する感想」という3つの行為が組み合わされていて、フラクタル性を有している。チームセミナーも、掲揚(目標設定)と実践(行動計画更新)と会話(自由な議論)の3つが揃っていた。ところが、アメーバ会議では、チームセミナーやビジョン会議で、上司たちによってすでに理念から落とし込まれた数値目標が扱われることが多く、理念の掲揚要素が十分ではないと考えられる37)

毎月開かれるアメーバ会議で、掲揚行為を強化する要素が加えられるならば、個人レベル(毎日)とリーダーレベル(毎月)と全社レベル(毎年・3年毎)で同じ構造が構成されることになり、理念を共有し、理念を自分事として創造的に実践し、理念について前提を留保して会話する仕組みが、個人から全体まで一貫して備わることになる。図8は、パラダイスプランが理念学習インフラを統合化した場合の規範的組織図である。

図8 理念学習インフラの統合化

一方、会話を強化する学習インフラの1つである「寺子屋」では、理念の実践要素が欠如している。経営トップや経営チームによるフィロソフィの解き明かしと理念達成に向けた会話があるが、それを現場にどう適用させるかという議論はあまりなされていない38) 。今後、パラダイスプランが、すべての学習インフラの断片化を解消するならば、フラクタル構造を一貫して維持することができ、経営トップや経営チームだけでなく、現場レベルで理念浸透学習を深化させることができると考えられる。

5.結論

パラダイスプランの事例を、Senge (2006) の「システム思考」を分析ツールとして解析することで、理念浸透メカニズムの理論モデルを導出することができた。理念の「実践」と「会話」が、「共有ビジョン」により、理念の「掲揚」を強化し、「掲揚」と「会話」が、「自己マスタリー」により、「実践」を強化し、「掲揚」と「実践」が、「メンタルモデル」により、「会話」を強化するという統合的な学習モデルが、経営トップにも、経営チームにも、若手やミドルの各層にも、「チーム学習」によって維持されるフラクタル構造を形成しながら、重層的に共通して存在していることが観察された。

ただし、このようなモデル化の試みは、あくまで一事業所のモデルなので、今後は他の企業の事例を元に精緻化を進めていく必要がある。特に、経営トップや経営チームが直接各部署の一般社員に対面して関与することができない規模の企業において、理念浸透のために彼らが果たす役割がどう変化するか、また、創業者が経営トップを務めていない企業でモデル適用が可能か、等の検証を今後の課題としたい。さらに、フラクタル性が貫徹された理念学習インフラを有する企業が、どのような理念浸透を経験するようになるかを検証することができればと思っている。

1)  観光業の成長により移住者が急増し、2017年に宮古島市の人口は上昇に転じたが、長期的には少子高齢化の進展により、本格的な人口減少社会の到来が予測されている(宮古島市, 2016)。

2)  バランス型ループとは、システムが平衡状態へと向かうための変化をもたらすプロセスである。図中には「B」で表示した。

3)  小さな的を絞った行動を正しい場所で行えば、持続的で大きな改善を生み出すという原則(Senge, 2006)。

4)  西里は、2018年9月16日に島の駅で、「人は幸せになりたい」のではなく、「幸せに生きたい」と思っていると述べていた。そのような生き方を選択する喜びが、会社へのコミットメントと、地域や関係者への貢献度合に相関するという一貫した思想が見受けられる。

5)  2020年7月5日付けの筆者宛メールで、西里は、本項記載の自身の発言に関する記述が、聴聞調査時に実際に自分が話した内容と一致していると確認した。

6)  2019年5月14日、本社で実施した西里への聴聞調査より。

7)  Porter and Kramer(2011)は企業と社会は敵対関係にあるのではなく相互依存の関係にあり、企業はその企業独自の資源や専門性を活用して社会的価値を創造することで長期的に継続する経済的価値を創造すると主張している。

8)  2019年3月1日、塩屋なんばパークス店での西里への聴聞調査より。

9)  2018年7月31日、塩屋なんばパークス店での西里への聴聞調査より。

10)  2019年3月12日、那覇営業所で実施したSへの調査より。

11)  2018年9月17日、塩屋平和通り店での聴聞調査より。

12)  Nは、「無限の可能性に挑戦する」というフィロソフィの言葉について同僚と居酒屋などで話すときに、涙が出そうになり、同じ志を持った仲間だと確認すると述べていた。2019年5月24日本社にて。

13)  2019年3月1日、塩屋なんばパークス店にて。Aは、2020年7月の調査で、すでに退職したことが判明。

14)  2018年4月6日、島の駅みやこにて。

15)  2019年5月24日、本社にて。

16)  2018年9月17日、塩屋平和通り店での聴聞調査より。

17)  北居と田中 (2009) は、理念浸透には、個人の内面的経験として「腑に落ちる」内面化プロセスと、マネジメント、製品、人事制度への反映として表れる「組織内への定着」という定着化プロセスという次元の違う2つのプロセスがあって、その双方が関連しあうと主張している。

18)  西里は、社長日報には指示や命令は含まれておらず、社長の独り言だと説明していた(2019年3月1日、塩屋なんばパークス店での西里への聴聞調査から)

19)  西里社長は、過去3年ぐらいは「チームセミナー」を開いていないが、新たに開始するつもりだと述べていた。2019年5月24日、本社にて。

20)  2019年5月24日、本社にて。

21)  2018年9月17日、那覇営業所にて。Tは、2020年7月の調査で、流通営業課に転属したことが判明。

22)  2018年9月17日、那覇営業所にて。Mは、2020年7月の調査で、塩屋平和通り店担当サブリーダーに転属したことが判明。

23)  2018年9月17日、那覇営業所にて。

24)  2018年9月16日、島の駅にて。

25)  2019年5月24日、本社にて。Hは、2020年7月の調査で、すでに退職したことが判明。

26)  2019年3月12日、那覇営業所にて。Oは、2020年7月の調査で、営業部長に昇進したことが判明。

27)  2018年9月17日、那覇営業所にて。Tは、2020年7月の調査で、流通営業課リーダーへの昇進が判明。

28)  2019年3月1日、塩屋なんばパークス店にて。Kは、2020年7月の調査で、すでに退職したことが判明。

29)  2019年5月24日、本社にて。Hは、2020年7月の調査で、すでに退職したことが判明。

30)  2018年4月6日、雪塩ミュージアムにて。Mは、2020年7月の調査で、塩屋東京ソラマチ店店長に転属したことが判明。

31)  パラダイスプランは、創業から10年ぐらいまでの間は、宮古島出身者だけで、会社の付き合いと地域社会の付き合いとが区別できない環境だったため、上下下達の文化は醸成されなかった(2019年5月24日、本社での西里への聴聞調査から)。

32)  2018年9月17日、那覇営業所にて。

33)  2019年5月24日、本社にて。

34)  2019年3月12日、那覇営業所にて。

35)  2018年9月17日、塩屋平和通り店にて。

36)  2019年3月12日、那覇営業所にて。Mは、2020年7月の調査で、営業営業課に転属したことが判明。

37)  営業本部のOは、ミドルや若手が営業実践をするときには、改めて理念について話し合うことは少ないと述べていた(2019年3月12日、那覇営業所にて)。

38)  経営チームの一員だったAは、寺子屋で理念を語ることには上手になるのに数字には無関心で、理念と数字が繋がって稼働していないと評価していた(2019年3月1日、塩屋なんばパークス店にて)。

参考文献
  • Argyris, Chris and Schon, Donald, A. (1974) Theory in Practice: Increasing Professional Effectiveness, San Francisco, USA: Jossey-Bass.
  • Argyris, Chris, (1985) Strategy, Change and Defensive Routines, London, UK: Pitman.
  • 金井壽宏、松岡久美、藤本哲 (1997) 「コープこうべにおける「愛と協同」の理念の浸透―組織の基本価値が末端にまで浸透するメカニズムの探求」『組織科学』第31巻第2号, 29-39.
  • 経済産業省中小企業庁 (2016) 「第6章 中小企業の稼ぐ力を決定づける経営力」『中小企業白書2016』中小企業庁.
  • 北居明、田中雅子 (2009) 「理念の浸透方法と浸透度の定量的分析 : 定着化と内面化」『経営教育研究』12(2), 49-58.
  • 宮古島市 (2016) 「宮古島市まち・ひと・しごと創生人口ビジョン」 <https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/shityo/kikaku/tyousei/oshirase/files/miyakojima-zinkoubijyon.pdf > 2020.7.21アクセス
  • 野中郁次郎、児玉充、広瀬文乃 (2012) 「知識ベースの変革を促進するダイナミック・フラクタル組織: 組織理論の新たなパラダイム」『一橋ビジネスレビュー』60(3), pp.110-124.
  • Porter, Michael E. and Mark R. Kramer (2011) “Creating Shared Value: Redefining Capitalism and the Role of the Corporation in Society”, Harvard Business Review, January and February. (編集部訳「共通価値の戦略」『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2011 年 6 月号, ダイヤモンド社).
  • 産経新聞社 (2017) 「宮古島から世界戦略!「塩商売」に人生かけるパラダイスプラン・西里社長、京セラ創業者・稲盛氏からたたき込まれた経営」zakzak経済ニュース、トップ直撃<https://www.zakzak.co.jp/eco/news/170627/eco1706270007-n1.html> 2020.7.21アクセス.
  • Senge, Peter M. (2006). The Fifth Discipline: The Art and Practice of the Learning Organization, London, UK: Random House. (枝廣淳子・小田理一郎・中小路佳代子訳『学習する組織;システム思考で未来を創造する』英治出版 2011年).
  • 瀬戸正則 (2017) 『戦略的経営理念論―人と組織を活かす理念の浸透プロセス―』中央経済社.
  • 柴田仁夫 (2017) 『実践の場における経営理念の浸透―関連性理論と実践コミュニティによるインターナル・マーケティング・コミュニケーションの考察―』埼玉学園大学研究叢書 第13巻、創成社.
  • 高尾義明、王英燕 (2012) 『経営理念の浸透―アイデンティティ・プロセスからの実証分析』有斐閣.
  • 田中雅子 (2016) 『経営理念浸透のメカニズム―10年間の調査からみえた「わかちあい」の本質と実践』中央経済社.
  • 梅澤正 (1994) 『顔の見える企業:混沌の時代こそ経営理念』有斐閣.
 
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